鳥尾の少年時代 その8 もどる |
NO.23 カエルつり カエルつりってみんな子供の頃しましたよね?したの俺だけかな…まっいいかこれも魚捕りの網で捕ってしまえば「はいそれまーでーよ」なのですが、わざわざ釣るところがプロとしてのこだわりかな。 その1. まず生きたハエを捕まえる。この時点で「無理だ」とあきらめる者はカエルつりをする資格がない。 その2. ハエが飛ぶのに邪魔にならないところに糸を縛ってかえるの前にぶんぶん飛ばす。この時点で「汚い!」と叫ぶ者もまたその資格なし! どうも最近の若いもんは根性がないなー、しかたがない!それができなければ刺身かスルメで代用してもかまわない。用意した餌を糸に結びカエルの前に投げると面白いようにくらいつく。でもこの方法では本当に手元まで釣り上げる事はできない。口の中でモゴモゴやるだけであまり飲み込んでくれないのが原因と考えられる。 ではどうすればいいのか?答えは簡単、ナンテンの実を糸に結び胃袋まで飲み込んだところをゆっくりと釣り上げればいいのだ。 なぜかこれだとすぐ飲み込んでくれる。もちろん少し強く引けばナンテンの実は抜けてくるのでカエルは逃がしてあげよう。話はちょっとそれますが、小学校の授業で「カエルの解剖」をやることになり私がカエルを捕まえる係りになりました。 張り切って雨の中傘も差さずに一日中さがしまわり、やっと一匹捕まえたと思ったらよく日カゼを引いて休んでしまった苦い経験がよみがえってきました。 …かあちゃんに言われるまでもなく本当にバカな子だったんですね。 NO.24 俺たちの秘密基地 秘密基地を作った事がありますか?楽しくて楽しくて時間のたつのも忘れて暗くなるまでその中で遊んだものです。できれば基地は木の上に作るのが一番楽しい。そこらへんの空地とか、工場跡に作ってもいいけど、すぐ親に発見されて「危ないからやめろ」って言われるのがせきのやまだからです。 でもそんな大人の目をかいくぐって作るのもまた秘密基地づくりの醍醐味でもあります。もちろん小さい子供ばかりではこの大プロジェクトを完成させることは不可能です。しかし、都合のいいことに子供の中には必ずガキ大将と呼ばれるリーダーがいるものです。 その子の命令のまま俺達は丸太や床に引くためのゴザを持って指定された場所に集まった。そして彼は言った「ここに秘密基地を作るぞ」そお言って一本の大きな松の木を指差した。その木は山の急な斜面に生えているせいか3mばかり地面とほぼ平行に幹が伸び、じょじょに空に向かってカーブした俗に言う曲がり木というやつでした。しかも根元が分かれている二股の木、秘密基地を作るにはまさにうってつけの木だ。 まず彼に命令されるまま二股の木に丸太を渡し、あっという間に立派な床を俺達は作った。木をいためないようにくぎを一切使わず、荒縄だけの仕事である。なぜこれだけの仕事ができたかと言うとそのガキ大将は大工のせがれで、こういう事がお手のものだったからです。 柱を作ったり窓を作るのは俺達では出来ないので、その子と年上の者がほとんど作ってしまった。小さな子は屋根を作るための細い枝やススキを集めるのが主な仕事となる。今思うとずいぶん理にかなった役割分担だなと思う。 床を張り屋根をつけ下に落ちないように木のフェンスをつけやっと俺達の秘密基地が完成だ!所要時間およそ2時間。最終チェックで年上の子が基地の中で飛ぶはね床が抜けないのを確かめる…O・Kが出るとおもむろにガキ大将が秘密基地へ登るためのはしごを取り付けた。俺達はそこで始めて上へ登ることを許されるのである。 秘密基地から見下ろす景色はすばらしく眺めが良かった。普段この景色は山の上から見慣れているはずなのに…ぜんぜん違ったものに見えるから不思議である。ひととおりその場の雰囲気を満喫したところで俺達はいったん下へ降り、自分の家へと戻っていった。何をするかって?秘密基地でお昼にするためのお弁当作りに決まっているじゃありませんか。 かあちゃんに見つかると絶対しかられるので、大急ぎで味噌で丸めたおにぎりと、きゅうりの漬け物を持って秘密基地へと走っていった。そこにはもう仲間が来ていてガキ大将が持ってきたお菓子をほうばっていた。もちろん俺もお菓子をもらうと、おにぎりときゅうりとお菓子を一緒に食べた。変わった味だったけど美味しかった。 そこで延々何をしていたかと言うと普段と変わらず漫画を読んだり将棋をしたり、ただそれだけなのに…地上で遊んでいるより数段面白いのはなぜだろう?周りが薄暗くなってカラスが鳴く頃ようやくガキ大将が「家へ帰ろうぜ腹へったから」その一言でみんないっせいに地上へと降りる。 実に4時間ぶりの地上。ガキ大将は、はしごを外すとそのまま持って行ってしまった。多分小さな子が、黙って登って落ちたら困ると考えたのだろう。それから親に発見されて秘密基地が撤去される10日間、俺達は毎日そこで遊んだのは言うまでもない。あんな楽しい体験は後にも先にも、もうないのかもしれない。ちょっとさみしい… NO.25 おもしろオヤジ 私の父はだいぶ前に亡くなった。気の早い男で死ぬのも早かった。強烈な個性の持ち主でオヤジの事を書くと本が一冊書けそうな位、変な意味で面白いオヤジでした。その中の話をひとつ… 俺の近所に養鶏場(卵や食用のために鶏を飼っているところ)があって鶏がいっぱいた。もちろん放し飼いの鳥もいていつも2〜30羽外で遊んでいました。好奇心旺盛な俺は雄鶏の長い尻尾の羽根がほしくて,その中でもひときわ立派な尻尾を持った鶏を追っかけまわしていた。ところが思わぬ反撃をくらいお尻をいやっと言うほどつっかれて泣きながら家に帰ったのです。 その事を知ったオヤジは烈火のごとく怒って「鶏を放し飼いにする方が悪い!!」と養鶏場の社長に怒鳴り込んでいったのである。それから30分後「仇とってやったぞ!おまえをつっいたのはこれだろ」と得意げに哀れ天国へ召された鶏を一羽持って俺の前に突き出した。 明らかにその鶏ではなかったのですが、あまりにオヤジがご機嫌なので思わず「うん」と言ってしまった。子供心にも,もともと鶏を追っかけまわした俺が悪いんだしもうこの件は終わりにしたいと思ったからだ。 「どうしてつっいたのが、その鶏じゃあないと言い切れるかって?」いくらオヤジが鳥に詳しいからと言って2〜30羽の中からたった一羽の鶏を特定することなど出来るわけもなく…だいいち俺をつっいたのは大きな雄鶏なのだ。オヤジが持ってきたのは誰が見てもすぐわかる尻尾の短い雌鶏だったのですから… その日の夕食に鶏の料理が出たのは言うまでも無い。 NO.26 兄貴の失敗 前に俺の親父は面白いと書いたが兄貴も面白い。その頃はやっていたサンダーバードの模型を自作しょうと、砂型を作りその中に溶けたアスファルトを流しこもうというのだ。多分アスファルトは,そこらへんの道をけずって持って来たんじゃなかろうか。段取りは全て済みあとはアスファルトを砂型に流し込むだけとなった。 しかし悪夢は起こった!コンロから溶けたアスファルトの入ったなべを下ろそうとしたその瞬間、手が滑りアスファルトが手にかかってしまったのだ。(なぜ、こんなに淡々と書けるかというと、だいぶ大きくなってから兄貴にこのエピソードを聞いたからである。その時の事は俺の記憶にはない!) 後はもうご想像のとおり大騒ぎになったらしい。母は、水ぶくれになった手からアスファルトを剥ぎ取りすぐお医者さんに駆け込んだ。後から聞いた話によるとこんな時は無理に剥ぎ取らず、そのまま水で冷やして後はお医者さんに任したほうが良かったらしい。しかし熱かったであろうアスファルトを素手で取ってくれた母の行動は、子供に安心感を与えたという意味からすれば、やはりベストだったと思う。 皮膚はくっつき手はおにぎりのようになっていたそうである。「それを一本々離し、消毒し、何とか事なきを得たんだぜ。イヤーもう少しで野口秀雄の手みたいになるところだったよ…」と兄貴は笑いながら言っていた。笑い事じゃないぞ! |