鳥尾の少年時代   その1  もどる


子供の頃の話なので多少生き物たちにはかわいそうな部分もありますが子供のしたことと大目に見てください


NO.1 「トカゲVS悪ガキ」 
  

今日の目的はトカゲとカナヘビを捕まえることだ。悪ガキ三人はいつものようにランドセルを木の陰に隠すとトカゲを入れるための牛乳ビンを持ってトカゲ狩りに出かけた。網を使うのかって…ノン!ノン!素手さ!トカゲの逃げ足より足が速ければ絶対捕まえられる。俺たちの憧れは、七色に輝く「黄金のトカゲ」といわれる代物だ。(七色なのに『黄金のトカゲ』ってところが子供だ)

カナヘビはわりと捕まえられるが「黄金のトカゲ」は素早い。マッハ1のスピードで逃げまくるので、なかなか捕まえることが出来ない。「あっち行ったぞ挟み撃ちにしろ!」その場は俺たちの叫び声と足音で怒号渦巻く修羅場と化した。

このトカゲの場合シッポだけ取れても仲間内ではけっこう自慢できる。「すげーおしかったじゃん!」普段勉強ができなくて肩身の狭い思いをしている俺たちもこのときばかりはヒーローだ。さらに凄いのがシッポが切れかかったところに新しいシッポが生えてしまった「幻のフタマタトカゲ」だ。普通あまり見かけることの出来ない物だがここら辺は俺たちが追っかけまわす物だから異常に多い。

三時間の収穫カナヘビ三匹黄金のトカゲ一匹、大収穫だ。又のバトルを約束するとトカゲたちを逃がしてやった。俺たち自身が動物そのものだった頃こんな生活があたりまえだった。

NO.2「コウモリを捕まえる方法」

あたりが薄暗くなり始めた頃、近所の子供たちが集って来た。手に手に棒だの虫アミだの持っている年長者の命令で今日はこれから「コウモリ捕り」をするのだ。コウモリは、超音波を出し、その時にハネ返ってくる反射音で障害物を認識する。空に石などを投げるとその石に付いて来て落ちるように飛んでくる。

誰も本気で捕まえられると思っていない。「もしかして…」と少しの期待をもって集まってきたのだ。だから「コウモリの捕りかた」なんてマニュアルが有るわけもなくひたすら棒だの虫網を振り回しているだけだ。その中でもさすがに年上の者はやることが違う。おもりを軽くしたトアミ(魚を捕るための大きな手投げ網、きれいに広げて投げるには相当のテクニックが要る) を空に向かって投げ始めた。これは見た目は派手なわりに誰の目から見ても「あれは駄目だな」という方法だった。(年上だから誰も面と向かって『駄目なんじゃない?』と言えなかった)

年上の者は10回くらい試みると労力のわりに見返りは少ない。と感じたのかあっさりとその方法を止めてしまった。やっぱり「トアミ
」は魚を捕るアミでコウモリを捕るアミじゃなかったのね…

次に彼が試したのは、昔からインディオなどが鳥を捕るときに使う方法である。手ごろな石を紐なで縛っただけの、いたって単純な道具だ。下に図で解説しておいたので参考にしてほしい。

※絶対鳥や動物に投げないでね昔やった方法として紹介しているだけで「これをやれ」と言っている訳じゃあないからね「じゃあ書くな」と言われるとへこんじゃうけど…

この方法はもしかして?!と俺たちを期待させた。同じ道具を作ろうと手ごろな石を探し始めた時「やったー」と大声がした。行ってみると、なんと本当にコウモリが捕れたのだ。しばらくコウモリを観察した後「よしやめー」年上の子はコウモリを空に放してやると、今日のイベントの終了を告げた。捕れるのがわかればいいのだ。彼の命令には逆らえない。

俺もいつかこの方法を試そうと、そのとき思ったがとうとうチャレンジしないまま今日に至っている。今考えてもあれは絶対マグレだったと思う。「試したけどコウモリ捕れなかったぞ」って俺を責めないでね…

※これを読んだ方で「なんて動物をいじめてかわいそうな事をするのだ」とお叱りの声もあるかと思いますが今のお子さんに足りないのは圧倒的に動物とのかかわりなのです。このコーナーに書いてあることは、どんなことでもいいから動物とかかわってほしいという鳥尾の願いが入っています。動物を捕獲するのがまだゲームとして存在していた頃の話なのでどうぞお許しください。

NO.3「カエルの卵とヒブナ」

小川にフナ捕りに行った。しかし魚捕りも一時間も遊ぶと飽きてくる。ヒルに血を吸われた場所がイタガユクなってきた時、仲間の一人が急に大声を出した。「カエルの卵だー」指差した方を見ると、トコロテンみたいなニョロニョロした中に黒い4ミリぐらいのプチプチが入った不気味な物体があった。触ってみるとブヨブヨしてけっこう俺好みの感触だ「ウシガエルの卵だな…」年上の子がしたり顔で言った。

それで何をすると言うわけでもないのに俺たちはそれを捕り始めた。バケツいっぱい捕れた頃「気持ち悪いな…」年上の子がつぶやいた。(おめーが捕れって言ったんだろ)捕った物をどうするかと言う話になったが「元に戻しておけ」またまた彼の命令である。俺たちはブツブツ言いながら適当に卵を水の中に戻したのだった。しかしすぐその不満を吹き飛ばす出来事が起こった。

「ヒブナがいるぞー」小川の中に真赤なヒブナが一匹泳いでいる。誰かが放した物なのか、大雨で民家の池があふれ、逃げてきた物なのか定かではないが俺たちの好奇心に火をつけたことは、疑いもない。その当時でもヒブナは安い値段で買えた物だったが普段いない所にいた「ヒブナ」というだけで価値は10倍位に上がる。結局そのヒブナは捕まえることは出来なかったが貴重な体験は捕まえることが出来た。


NO.4「セミ君のいた夏の日」

大きな木の下には、たくさんのセミの出てきた穴があいている。ヒマだった俺はそれをひとつひとつ丁寧に埋めて平らにするのが何故か好きだった。そして木にへばりついているセミの抜け殻を集めてはその中に泥をきれいにつめて又木に引っ掛けておいたりと、くだらない事ばかりしていた。

夏の昆虫と言ったらやっぱりセミがダントツだろう。セミにオシッコをかけられて周りにいた仲間に大笑いされたのは俺だけではないはずだ。子供はすぐにランク付けをする。アブラゼミが一番下、一番上はクマゼミ。つまり羽の透明なセミを捕まえた物がヒーローになれた。

アブラゼミは向こうからぶつかって来るくらい、いたので素手で捕まえては指の間にはさみ誰がいっぱいはさめるか競争したのが懐かしい。この遊びは15分としていられなかった。捕まえたセミの鳴き声がうるさくて頭が痛くなってくるからだ。(しかし仲間のセミが捕まっても、すぐそばで鳴きつづけているセミの心がわからない…)

あと起きていられたら夜、土の中から出てきたセミの幼虫の観察をしてみるといい。成虫の姿からは想像もつかない形をしている。カマのような大きな前足を使ってゆっくりゆっくり登ってくる。(俺の育った土地ではこの幼虫のことを『もず』と呼んでいた)トナリではもう羽化の始まったセミがいる。羽化したセミを見ると、「おや?」っと思う。茶色のはずのアブラゼミなのに出てきたセミは白っぽくてまるで突然変異じゃないのか?と疑うくらいだ。でも時間が経つとちゃんとあの暑苦しいアブラゼミになった。

そんな一生懸命なセミを見た翌日は不思議とセミを捕る気になれず「セミもがんばってるんだなー」と一人木の上で漫画本を読みふけった。その時は虫はもういじめまいと心から思ったのだが少し時間が経つと又バン!バン!セミ捕りをしている俺がいた。子供とはそんなものじゃ!